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船員の事故率は高い!乗船する前に知っておきたい身の安全策

更新日:2022年10月7日


雨季になり、甲板で行う作業にも影響が出てくるようになりました。

荷役中は雨具を着て、視界の悪い中、安全に作業を進めます。


私が学生までに抱いていた船員のイメージは、もっとスマートで、海原を操船してカッコいい!大きな機関を動かして立派!という勝手な空想を描いていました。

実態は泥臭く、時には貨物タンクの中を潜って洗浄したり検査したりするといった、作業着を汚す現場仕事がほとんどです。


しかも船長以外は大体、現場に回るので安全について熟知しないと死傷事故に繋がります。

今回は、学生時代から知っておきたい海運業界の事故と安全について書いていきます。


目次

 1.学生時代に聞いた「先輩が事故で亡くなった」

 2.死傷災害発生率は、陸上職と比べて高い

 3.無事に下船することが、大切な人への1番のお土産

 


1.学生時代に聞いた「先輩が事故で亡くなった」


船とは優雅なイメージが強く、テレビでも船員の格好いい部分を全面的に出します。

そういった憧れから、いざ船に乗ってみると、当初のイメージと異なること点があることに気づかされます。

船の目的とは、荷物を積み込み、目的地へ安全に届けることです。

航海中・停泊中は船の安全に徹底するとともに、機関整備、荷役や係船設備の点検、修理に取り掛かります。

内航船や小さな船では、部員も職員も関係なく、泥まみれ・油まみれ・ペンキまみれになって作業することは往々にしてあります。

船に乗りたての頃は、溶接の段取りやペンキの準備、ロープの修理など荷役以外にも覚えることは多く、苦戦したことは記憶に新しいです。

上司になった今では、俯瞰できる立場とスキルがあるので、効率を考えて取り組むことができます。

私が新人時代から変わらず、最も意識していることは、ケガをしないこと、他人にケガをさせないことです。

きっかけは、私が海上技術学校に在学中、就職した2コ上の先輩が荷役中に亡くなったことです。

死因は、コンテナに挟まれたことによる圧死でした。

在学中に自分もお世話になったこと、亡くなったことが学校中に知れ渡ったこともあり、鮮明に覚えています。

右も左も分からない新人だからこそ、安全を徹底することが肝要だと、私は学生時代に思い知らされました。


 

2.死傷災害発生率は、陸上職と比べて高い


船員とは、船を航行するだけでなく、荷役を進めるために重量物を操ったり、保守作業のために高所へ乗ることがあります。

ちょっとした誤操作や連絡不足が、重大な事故に繋がることも少なくありません。

海運業界は、年間700名以上の負傷者、30名前後の死亡者を出しています。

昔に比べ減少傾向にあるものの、全産業平均の3倍以上の死傷事故が発生しているのです。

私自身も数え切れないほど、危ない体験をしてきました。

・後部マスト灯に登った際、船が急に動揺して、手を滑らしたこと。

・係船作業中に、ロープがバウスラスタに巻きこまれそうになったこと。

自分自身が危険なことを起こす場合もあれば、他の船員が起こす場合もあります。

大切なことは、危ないことを起こさないことと、起こしてしまった後に的確に処置することです。

作業に対して、乗組員同士が注意し合い、徹底的に確認することが重要です。

新人時代は、まず危険な区域を調べ、やってはいけないことを覚えることを最優先にして欲しいと思います。

必要であれば先輩に聞いて、質問攻めにしてまでも、荷役における全体の流れや、安全に対する問いを投げかけましょう。

安全対策の精度は、会社ではなく船員のひとりひとりの意識の高さによって決まります。


 


3.無事に下船することが、大切な人への1番のお土産


私は船員を続けて10年以上が経ちましたが、海上職は応用力・判断力が求められると常々思います。

新人時代を卒業し、一人前になると、いつも近くにいた頼りになる先輩はいません。

部員も業務遂行が目的にあり、職員になると社会的責任が問われるようになります。

昇進するほど、求められるレベルも高くなり、場の状況や進捗によって、自ら判断し動くことが多くなるのです。

一人前になるまで思うより短期間でかつ、差が著しいことから、船員の厳しさを感じる瞬間でもあります。

重い役職に就いた現在でも、新人時代を振り返り、責任を持って指示してくれる存在が隣にいたこと自体、とても有り難いと思うこともあります。

これから、皆さんは乗船し、どのような先輩と体験を積み重ねるか分かりませんが、一貫して言えることは、自分も他の乗組員も五体満足で帰宅することが一個人におけるミッションだということです。

まず無事に帰宅することが絶対条件なのです。

自分だけの身とは考えず、あなたを大切に思う家族や友人がいることを忘れてはいけません。

少々話が大きくなりましたが、事実として船員は家庭想い、仲間想いの方が多いです。

学生時代から危険予知を怠らず、自身と仲間の身の安全を確保して、充実した船員生活を過ごして下さい。

 

【筆者について】

 氏名:高橋 敬

 職業:内航船員(749t コンテナ専用船)

 保有資格:3級海技士(航海)・4級海技士(機関)

 経歴・船種: 海上技術学校➡内航タンカー➡現職:船長

 船員を目指したきっかけ:幼少期、港へ親と一緒に行った際、大型フェリーや大型商船の

 離着岸に圧倒され心を奪われた

 インタビュー・加筆修正:ITecMarin株式会社

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