海技士免許も受かって、明日からいよいよ乗船!
初乗船の緊張は本当に分かります。
私も初乗船の前日は、持参物の過度の確認、船内生活への不安で心がいっぱいで、居ても立ってもいられませんでした。
今回は、船員なら皆、必ず通過する初乗船についてお話します。
実際の環境や必要な心構えについて書きますので、乗船がまだ先の方にも参考になると思います。
➡参考動画
1.乗船後まもなく、柔軟な思考と行動が求められる
皆さんは初乗船後、仕事と乗組員の顔を覚え、慌ただしい船内生活を送ることになります。
始めの内はガムシャラに仕事をこなし、失敗を繰り返しながらも日が経つ内に、運行スケジュールや仕事に身体が慣れだし、ゆとりが生まれます。
真面目に取り組んでいる人ほど、もっと良い段取りはできないか、もっと早く仕事を進めることはできないか、こういった調子で物事について疑問と改善点を探し出すでしょう。
私の場合は「早く認められたい!」と思うあまり、段取りを重視して工具を勝手に移動し、先輩にとても叱られたことがあります。
1度や2度では無かったため「新人なのに勝手なことをするな!」と耳にタコができるほど指摘されました。そして、今ではその理由が理解できます。
船とは習慣・定型化されているため、小さな変化でも乗組員は敏感に反応します。
大きな理由として、造船後、乗組員と会社で話し合いを何度も重ねながら、最も効率的な環境を整えてきたからです。
みなさんが乗船している「今の状態」は、先人たちの知恵が結集された「優れた状態」なのです。
反面、古い習慣や決まり事があることも否めません。環境について、いかに段取りを悪く感じても、理不尽に感じても、簡単に覆ることはないでしょう。
船とは海に出てしまえば、1つの国です。
会社が決めた規則があったとしても、細かい部分は乗組員によって決まります。
提案をするのであれば、まず実力をつけて認められる必要があります。
新人の内は我を通すのではなく、先ずは力をつけ、柔軟に対応することが賢明と言えるでしょう。
2.「学校ではこうでした」は、敵をつくる
船内生活を過ごしていると、失敗して叱られることが多いです。
業務が複雑で安全意識を持って行うため、これは仕方がないことなのです。
人によっては、毎日のように注意を受けます。
私も最初のうちはよく怒られました。皆そうなのです。
技術的な失敗が大半だと思いますが、稀に注意する側も感情的になってしまい、時に厳しい言葉を浴びせてしまうかも知れません。
そういった時、新人船員が言ってしまいがちな言葉が「学校ではこうでした」です。
残念ながら、この返し言葉は、百害あって一利なしです。
下手をすると、先輩船員の全員を敵に回し、仕事を教えてもらえなくなります。
人は事実ではなく、感情に従います。
荷役や航海だけではなく、部下の管理や書類業務も多い先輩船員は、休む時間も少なく責任ある仕事をしているのです。
体力的な部分ならまだしも、精神的な部分もすり減らしながら、乗組員全体のことを思って行動し続けてくれています。
どんなにつらいことがあっても、学校で習ったことを引合いに出さないことが肝要です。言い訳しても、良いことなど1つもありません。
仮に正論だとしても、嫌われる要因となります。
厳しい世界ですが、あくまで職場のルールに則ることを保持することが大切です。
感情的になってしまう先輩の心を察して、立ち居振る舞いをすることも思いやりと言えます。そしてそれはあなた自身の快適な船内生活・成長に繋がるのです。
3.新人時代は、乗組員と労働環境に馴染めるかが重要
皆さん。心配ありません。
先輩船員及び、会社から新人船員の仕事に対する期待値は0に等しいです。
代わりに、あなたの性格、元気さ、仕事に対するやる気を最重要視しています。
協調性を持っているか、毎日精進しているか、積極性を持って臨んでいるかなど、結果ではなく、過程を見ることが多いです。
船員の新人時代とは、体育会系と言っても過言ではありません。
無事故・無違反を徹底するためには縦社会でないとなりませんし、秩序が乱れると安全意識に影響を及ぼすからです。
船員とは、地頭が良い人が長続きする業種ではありません。
不器用で負けず嫌い、努力家が多い傾向にあります。
おそらく先輩も周りに助けられ、支えられてきた人でしょう。
周りの支えがあって初めて、船員を長く続けられます。
支えられるためには、自分の扱いやすさをアピールすることが大切です。
また、乗組員をよく観察し、全体を客観視して、偏りすぎず船内でのコミニュケーションを取ることも重視してください。
もし、評価されない日が続いても、気にすることはありません。
ほとんど褒めない仏頂面な先輩でも、あなたの取り組みと、取り組みから出てくる小さな成果について、密かに喜んでいるはずです。
褒めることによって、甘えが生じることを懸念するからこそ、褒めどきを考えています。
一心不乱に打ち込み、思いやりを持って業務に当たれば、あなたの船員生活を力強くサポートする人が増えます。
乗船する大前提として、学校教育と現場では大きな違いがあることを認識し、学校というフィルターを一旦外して、真っ白な気持ちで臨みましょう。
それが、結果として、あなたの成長・快適な船内生活に繋がりますので。
【著者について】
氏名:高橋 敬
職業:内航船員(749t コンテナ専用船)
保有資格:3級海技士(航海)・4級海技士(機関)
経歴・船種: 海上技術学校➡内航タンカー➡現職:船長
船員を目指したきっかけ:幼少期、港へ親と一緒に行った際、大型フェリーや大型商船の離着岸に圧倒され心を奪われた
インタビュー・加筆修正:ITecMarin株式会社
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