船員・船員を目指す方向け、就職・転職体験記シリーズ第2弾。
現役機関士は『何を考え』『どうやって』メーカー陸上職に転職したのか!?
今回は船員➡陸上職の転職記ですが、陸上職➡船員の転職記や、船員➡船員の転職記なども追加していく予定です。
船員の方がキャリアプランを描きやすい環境づくりの一助となれれば幸いです。
目次
1.転職活動の導入
2.転職活動での障害と対策
3.私の転職体験記最後に
1.転職活動の導入
①そもそも陸上職に就けるの? 若い頃から憧れていた船員になった場合でも、『様々な事情から船で働き続ける事が難
しい…』『やっぱり陸上職がいい!』となる場合もあるかと思います。
その時、『学校を出てからずっと船で働いてきたから陸でスーツ着て電車乗って…そん
なのムリ!想像がつかない!』と思われるかも知れません。
いえ!実は船乗りはとてもスキルが必要な仕事なので、陸上でも大いにスキルを活かして
働く事が可能です。個人的な経験に基づきますが、今回は転職の流れや心掛けなどお伝え
できればと思います。
②どんな会社に行けるのか A)航海士編 航海士は運航のエキスパートであり、特に運航・荷役に関して、現場経験を活かせる
フィールドでの活躍が期待されます。
ただ、航海士としての経験や海技士(航海)免状については陸上職に応用するには幅が
狭い部分はどうしてもありますので、船舶運航に関する知見を活かす事ができるフィー
ルドをまずは検討されてみてはいかがでしょうか。
※航海士の主な転職先 船舶運航管理会社・物流会社・倉庫会社・港湾事業関係職etc.
B)機関士編 正直、元機関士は陸上では引く手あまたです。電気設備メンテナンス、ボイラー。全然
大丈夫ですよね。
陸上職の人達は「電気工事士」や「ボイラー技士」資格を取得して仕事をされていま
す。他方、海技免状は船の上限定で整備作業を許される免許ですので、取得しているか
らといってそのまま働けるわけではありません。
しかし、陸上の恵まれた設備環境でもなく、揺れる船の中で狭い空間に敷設されたプラ
ントと格闘してき機関士の方の技術力は、陸上の専門職の方たちに引けを取りません。
二等機関士クラス以上でディーゼルプラントやタービンプラントを実際に操作・整備し
てきた経歴があれば、更に転職先の幅は拡がります。
舶用機器メーカーでのメンテナンス・設計等、実際に船という現場でプラントに触れて
来た人間はどこのメーカーも喉から手が出るほど欲しい人材です。
ただし、気を付けた方が良いポイントもあります。例えば、「船でエンジンを触ってき
た経験を活かして自動車業界に入りたい!」など。このような進路へ進むのはかなり難
易度が上がる可能性はあります。
船舶関係よりも裾野が広く、人材が豊富な業界への転職は、船での経歴を評価してくれ
る所は少ない場合もあります。時期によって同じ業界でも人材採用ニーズは変わってく
るので、業界や会社を最初から絞り過ぎず、ある程度すそ野を広げてみてみると選択肢
が広がるかもしれません。
※機関士の主な転職先
重工系メーカー・造船会社・各種舶用機器やプラントメーカーの設計、メンテナンス 部門 etc...
※その他、航海士・機関士問わず、採用されやすい転職先 海運会社(陸上職)・船級協会・運航管理会社・本船バイヤー・保険サーベイヤー・
海技免状関係教育機関 etc...
2.転職活動での障害と対策
船乗りの転職活動においてネックとなるのが「まとまった時間が取れないこと」です。
転職をするには企業の求人を探し、求人に応募。そしてほとんどの企業の場合、実際に会
社へ赴いて採用面接を受ける必要があります。
しかし、現職の船乗りを継続しながら、面接と言われても、船に乗っているのにどうやっ
て行くの!?となるわけです。
そこで私自身がどのように対応したかを含め、対策をお伝えいたします。
A)長期休暇中に面接を受ける 最も理想的な方法です。場合によっては現職の会社に「転職活動をしたいので…」とい
う意思を伝えづらい状況もあるかも知れません。それらしい理由を考えるなど、長期休
暇の時期をなるべく採用活動に合わせた時期にできるように調整しましょう。
一般的には企業の採用シーズンに合わせ、12月~翌年3月の間のどこかでまとまった休
暇を取る事ができればよいでしょう。
そのためには、それ以前の時期に企業調査、書類選考、そして現職の状況を先方へ説明
し、面接日程を調整できるように調整しましょう。
B)長期休暇を合わせる事ができない場合 乗船期間の短い航路・会社で勤務している場合、日程調整は難しくないと思います。
しかし、長期航路で休暇日もギリギリまで確定しない…休暇になってもいつまで陸にい
られるか分からない…そういったケースもよく聞きます。(特に、辞めたいと思うよう
な会社はそのような実態が多いように感じます)
そのような時は、勇気を出して「会社を休む」決断をしてください。一番負担が少ない
のは「休暇中に乗船の辞令が出る前に休暇の延長を申し出る」事だと思います。
ただし、「この会社は辞める!」という確固たる決意が必要です。どちらにしても、決
意がないと転職活動をしても結局、今より良い環境の会社へ入社することは期待できま
せん。
3.私の転職体験記
この章では、私の転職活動についてご紹介します。
(動機やうまくいったこと・失敗したことなど)
①転職動機 機関士として乗船している時は短くても3ヶ月、長い時には最長14ヶ月間、自宅にまと
もに帰宅することができませんでした。
結婚し、子供が産まれた事がきっかけで、妻や子供といっしょに生活できる仕事に就
き、子育てを積極的に手伝いたかったため、自宅から通勤できる仕事に転職しようと思
ったのが転職のきっかけです。
②転職活動でうまくいったこと・失敗したこと
うまくいったこと 幸い、学生時代の繋がりから自身のスキルを活かせそうな仕事がたくさんあったこと。
また、転職経験豊富な方から転職先の選び方のノウハウを教えてもらうことができた
(人から紹介を受ける時は、その分提案を断りにくくなることもあるため、特定の人に
頼りすぎるのは避けた方がいいかも)。
失敗したこと 自身が船乗りをやっていた中でどのような成長ができていたのか、何が自分の糧になっ
ていたのか、上手く整理ができていなかったため、自己アピールが難しかった。
③転職活動をする上で重要なポイント ・普段、情報が入ってくる関係づくりや仕組みづくりをしておく 情報は武器であり、選択肢の幅に直結します。普段色々な情報が入ってくるようにアン
テナを高くし、悩んだときは頼れる人に相談することを心がけてしてみるとよいでし
ょう。
・転職候補先は確り下調べを行うこと 現職よりも悪い環境に行くのであれば時間と労力を割いて転職活動をするメリットがあ
りません。転職候補先の雰囲気や実情を確り調べておくことをお勧めします。
・前向きな将来のビジョンを持つこと
転職をする場合は現職を辞めるわけですから、後ろ向きな理由は必ずあるものです。し
かし、「今の仕事はもうやってられないので御社へ入れてください」ではどこの会社も
採用してはくれません。
面接での受け答えも想定しつつ、「自身のこれからの人生において、転職がよりプラス
に働く」ような将来ビジョンを持ちましょう。
・船を知らない人が分かるように、自身の仕事を説明できること 船での仕事は、海運業界でも実際に乗船勤務した事がある人でなければイメージがつか
ない場合がほとんどです。
実際、私が面接を受けていても「船の機関士が船で何をしているのか」「海技免状がど
のような免状か」を知らない人にたくさん出会いました。現職で、「自身が船で何をし
ているのか」を噛み砕き、誰にでも分かりやすく説明できるようにておきましょう。
最後に
海運・船舶関連会社では喉から手が出るほど欲しい「元船乗り」。しかし、他の業界ではまだまだ知名度は高くなく、なかなか理解もしてくれない業界が多いのも実情です。
ただ、次第にライフスタイルやキャリアアップのために業界や職場を変えやすい環境になってきていることも事実です。海運・船舶業界と他の業界には少し壁がありますが、進んで調べたり相談してみることで、新しい道が開けることもあります。
どうしようもない状況・環境で潰れてしまわなくても、別の選択肢もありますので、より良い環境を求めて挑戦していく選択肢も持っておくと良いのではないでしょうか。
具体的に悩んでいる・相談したいことがありましたら、お問合せ下さい。 https://www.itecmarin.com/contact
著者について 氏名:高島 大輔(仮名) 職業:船舶関連機器メーカー勤務 保有資格:3級海技士(機関)・第1級海上特殊無線通信士 経歴・船種: 商船系大学➡三等機関士➡メーカー勤務 船員を目指したきっかけ:海への憧れ インタビュー・加筆修正:ITecMarin株式会社 写真: https://www.photo-ac.com/ , https://stock.adobe.com/jp/
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