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30代未経験者が船員になるには?給料や待遇、実際の転職事例を解説!!

30代未経験からでも船員としてのキャリアを築くことは十分に可能です。船員業界は慢性的な人手不足に悩まされており、未経験者からでも資格が取得できる環境・制度が年々整ってきています。この記事では、30代未経験者が船員になるためのルートや必要な資格、仕事内容、働き方のリアルを詳しく解説しています。


30代未経験から船員になるには?

30代未経験から船員になるには?
30代未経験から船員になるには?

船員としてのキャリアを考えると、若いうちから始めるイメージが強いかもしれませんが、実は30代から未経験で船員になることも十分に現実的です。船員資格である海技士六級免状取得者の平均年齢は30代が多くを占めているというデータもあります。つまり、30代からのスタートは決して遅いわけではなく、むしろ一般的な年齢層です。※1


また、近年、船員業界は慢性的な人手不足に悩まされており、特に若手や即戦力の人材を求めています。無利子の奨学金制度の開始など、未経験者でも比較的資格取得しやすい環境が整ってきており、まさに“売り手市場”といえる状況です。求職者側の需要が高いため、未経験者でも挑戦しやすいタイミングといえます。


では、具体的にどうすれば船員になれるのでしょうか?未経験者が船員になるための主なルートとして本記事では以下の2つのルートを紹介します。

1.海上技術学校への入学

2.海技士養成講習(六級一種)への参加


海上技術学校とは?

海上技術学校は、船員を目指す人々が必要な技術と知識を学ぶための専門学校で、3年制の「海上技術学校」と、2年制の「海上技術短期大学校」があります。全国に7つの学校があり、独立行政法人海技教育機構の管轄のもと運営されています。主なカリキュラムには、航海・機関の専門教育が行われています。海上短期大学を卒業することができれば、四級海技士(航海)の筆記試験を免除することができます。海上技術学校についても乗船実習科修了すれば、四級海技士(航海)の筆記試験を免除することができます。


■入学基準

3年制の海上技術学校への入学には、中卒以上の学歴が求められ、2年制の海上技術短期大学校には高卒以上の学歴が求められますが、年齢制限は厳しくありません。また、身体検査も行われ、特に船での仕事に必要な視力や聴力が基準を満たしていることが重要です。未経験からでもしっかりと学べるよう、実習プログラムも充実しています。


■学費とサポート

学費については、他の専門学校に比べて比較的リーズナブルで、さらに奨学金制度も整っています。入学後は寮生活を行い、実習船でのトレーニングも受けられるため、即戦力としてのスキルが身につきます。卒業後は海技士の資格取得に向けたサポートも充実しており、就職率も高いのが特徴です。


海上技術学校を経て、多くの卒業生が船の現場で活躍しています(現場で資格を取得し、外航船員の道に進まれる方も)。30代未経験であっても、しっかりとした基礎を築けば、新たなキャリアを切り開くことが可能です。


海技士養成講習(六級一種)とは?

六級海技士養成講習は、海上での業務に必要な資格を短期間で取得できるプログラムです。講習期間は最短で10.5ヶ月と比較的短期間であり、効率よく必要な知識と技能を身につけることが可能です。


■講習内容

・航海技術:操船や海図の読み方、気象情報の把握

・機関操作:エンジン・発電機の始動やメンテナンス、安全管理

・通信操作:無線通信や海上での連絡手段の使用方法

この講習を修了することで、六級海技士試験の筆記試験が免除されるため、合格へのハードルが大きく下がります。また、実習も並行して行われるため、実践的なスキルが身につきます。


■講習受講料

受講料はおよそ50万円〜60万円程度が目安ですが、奨学金制度や各種助成金の利用が可能です。特に、無利子の奨学金も提供されているため、金銭的な負担を抑えて学ぶことができます。


30代未経験者が押さえるべき「船乗り(船員)の仕事」とは?

船員の仕事は大きく甲板部と機関部の2つの部門に分かれています。


甲板部とは

甲板部は、船の安全な航行を行う役割を担っています。

具体的な業務内容は以下の通りです。


・航海当直:航行中に船の位置や航路を確認し、操船を行う

・離着岸・荷役作業:船の離着岸作業や、港での荷役の管理を行う

・甲板整備:サビ打ちやペンキ塗りなどのメンテナンス作業

・救命設備の点検:救命ボートや浮き輪のチェックを行う


機関部とは?

機関部は、船のエンジン・発電機の操作やメンテナンスを行う部門です。具体的な業務内容は以下の通りです。


・機関当直:エンジンの監視、稼働状況のチェック

・機器メンテナンス:オイル交換や整備作業

・トラブル対応:機械の不具合が発生した際の迅速な対応


いずれも、実務経験を積むことで、より高度な技術を身につけていくことができます。


30代未経験者が船乗り(船員)になった場合の給料や待遇は?

船員の給与や待遇は、職種や役職、乗船期間などによって異なります。令和6年(2024年)の「船員労働統計」によると、日本人船員の平均年収(年間支給額)は以下の通りです。


■平均給与(額面)


■ 内航船の船員(主に国内航路)

 ・月間給与:489,719円

 ・年間賞与等:898,642円

 ・年収:6,775,270円

※年齢46.8歳、経験年数21.4年


■ 外航船の船員(国際航路を含む)

 ・月間給与:808,862円

 ・年間賞与等:2,776,867円

 ・年収:12,503,211円

※年齢38.3歳、経験年数10.8年



■休暇制度

船員の勤務は、一定期間の乗船勤務と、その後の休暇期間を繰り返すサイクルが一般的です。乗船期間は通常1〜3ヶ月程度で、航路や業務内容によって異なります。乗船後には、数週間から1ヶ月程度の休暇が設けられ、心身のリフレッシュや家族との時間を過ごすことができます。このような勤務形態は、集中して働いた後にまとまった休暇を取ることができるため、メリハリのある生活を送ることが可能です。


福利厚生と待遇

船員として働く場合、以下のような福利厚生や待遇が一般的に提供されます。

・社会保険完備:健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などが適用されます。

・食事/宿泊の提供:乗船中の食事や宿泊(船内泊)は船会社が提供するため、生活費を抑えることができます。

・制服/作業着の支給:業務に必要な制服や作業着が支給されます。

・資格取得支援:海技士などの資格取得に向けた支援制度が整っている場合があります。

・定期健康診断:定期的な健康診断が実施され、健康管理が行われます。


これらの福利厚生により、安定した生活基盤を築くことができ、長期的なキャリア形成が可能となります。


30代未経験者が船員を目指す際の注意点とは?

船員を目指すにあたり、未経験者が特に注意すべきポイントがあります。


1. 事前に学校・先輩に相談をする

未経験から船員を目指す場合、まずは海上技術学校や海技士養成講習を提供する学校や、実際に船員になられた方に相談することが重要です。入学条件や学習内容、卒業後の進路など、実際に聞いてみることで理解が深まります。


2. 学校の選定をしておく

自分の経済状況や時間軸から、学校・就職方法などを選定しておけるといいでしょう。

可能であれば、オープンキャンパスや企業説明会に参加して、現場の雰囲気を確認しましょう。事前の情報収集と適切なキャリアプラン選定によって、スムーズなキャリアスタートが可能になります。


実際の30代未経験者からの船乗り(船員)転職事例について

一等航海士としてコンテナ船に乗船するAさんのケース

Aさんは30代半ばで未経験から船員を目指し、海技士養成講習を受講した後、一等航海士としてコンテナ船に乗船しています。現在、国内外の貨物輸送を担当し、長期間の航海を続けています。


・日々のスケジュール:

Aさんの一日のスケジュールは以下のようになっています。


①航海中

4:00 航海当直

8:00 休息・食事・睡眠等

16:00 航海当直20:00 休息・食事・睡眠等

②入港・荷役がある時

4:00 航海当直

8:00 離着岸作業・荷役監視

12:00 休息・食事・睡眠等

16:00 航海当直

20:00 休息・食事・睡眠等


船乗りのメリット

Aさんが感じる船乗りとしてのメリットは、長期間の休暇です。乗船期間が終わると、数週間から1ヶ月のまとまった休みがもらえるため、平日に旅行に行くことも可能です。平日旅行では宿泊費も抑えられ、観光地も混雑していないため、ゆっくりと観光を楽しめると言います。また、航海中は生活費がほとんどかからないため、貯蓄がしやすく、次の下船期間には計画的な旅行や家族との時間を充実させることができます。


船乗りのデメリット

一方で、家族と長期間離れて過ごす時間があることが、最も大きなデメリットだと感じているようです。特に、子どもの成長や家族イベントに参加できないことも多く、帰港するまで連絡手段は限られています。しかし、その分、下船期間に集中して家族との時間を作るよう心がけているとのことです。


Aさんは、未経験からの挑戦でしたが、今では航海士として確固たるスキルを持ち、世界中を航海しています。乗船中の厳しい勤務時間をこなしながらも、長期休暇を活かして自分の時間を楽しむ生活を実現しています。


一等航海士としてガスタンカーに乗船するBさんのケース

Bさんは30代で未経験から船員の道を志し、海技士養成講習を修了後、一等航海士としてガスタンカーに乗船しています。現在、液化したアンモニアを運搬するガスタンカーの管理・運航を担当しています。999トンのガスタンカーで国内外の港を結び、肥料や衣服の原料となるアンモニアを輸送しています。


日々のスケジュール

Bさんの一日のスケジュールは以下のようになっています:


①荷役中

6:00 機関スタンバイ

8:00 入港、着桟、荷役開始準備

8:30 荷役スタート

14:00 荷役終了、片付け、出航

14:00~当直


②航海中

1:00 当直

5:00 休息&昼食&就寝

13:00 当直

17:30 夕食&休息&就寝


船乗りのメリット

Bさんが感じる船乗りとしてのメリットは、乗船中の生活費がほぼかからない点です。ガスタンカー内では、衣食住がすべて揃っているため、生活費の心配がありません。

また、海上での生活のため通勤時間もなく、港に着いても基本的には船内で仕事が完結します。さらに、ガスタンカーは高収入で安定しており、特に機関士は手に職がつくため、技術を持つことでキャリアを確立できるといいます。


船乗りのデメリット

一方で、船乗りのデメリットとしては、荒天時の揺れや貨物の匂いによる酔いが挙げられます。特にガスタンカーは化学薬品を運ぶことも多く、特有の匂いが体調に影響する場合もあるとのことです。また、緊急時にすぐに陸地に戻れないという制約もあります。特に体調を崩した場合や家族に何かあった場合、陸上勤務と違い、即座に駆けつけることができません。


Bさんは、30代未経験からのスタートでしたが、ガスタンカーの一等航海士として技術を身につけ、安定した収入と長期休暇を得ています。高収入と生活費の負担が少ないメリットを活かし、将来的には機関長を目指したいと語っています。


まとめ

30代未経験でも船員としてのキャリアを築くことは十分に可能です。未経験者でも挑戦できるよう、海技士養成講習や海上技術学校が整備されており、資格取得も短期間で行える環境があります。


また、船員業界は人手不足が続いているため、まさに今がチャンスです。実務経験を積みながらスキルを磨き、船の安全運航を支えるプロフェッショナルとして活躍できる未来があります。


船上での長期勤務は体力や精神力も必要ですが、その分、長期の休暇や安定した収入が得られ、やりがいのある職業です。


新たなチャレンジとして、海の世界でのキャリアを目指してみませんか?


 
 
 

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