【船シゴトーク!#02 】バンカー船の実態に迫る

船シゴトークとは…「船シゴトーク」は、20歳の商船系学生が、就活生の目線でさまざまな船種を取材するインタビュー企画です。
新卒で船会社を目指す学生にとって、企業について詳しく知る機会は多くありません。そのため、入社後にギャップやミスマッチを感じてしまうこともあります。
そこで本企画では、就職活動の参考となる情報をお届けします。自分が何を重視するかを考えるきっかけになり、どのような人が働いているのかを肌で感じられるようなリアルな記事を目指します。
今回の船シゴトークは、バンカー船編!様々なイメージや噂の実態を、直接ぶつけてみました!
•バンカー船のイメージ

バンカー船といえば、「岸壁ではなく船を横付けして給油するため、非常に高度な操船技術が必要」「油を扱うため危険で、常に緊張感のある仕事」「他にも、油を扱う上で海技士免許以外の資格も必要」というようなイメージがありました。一方で、毎日家に帰られる特別な船乗りというイメージもあり、実際の仕事内容や働き方を知る機会は少なく、その実態はあまり知られていません。
•インタビュー
■ インタビュアー:松岡(ITecMarinインターン、商船系学生)
■ お相手:バンカー船船員Tさん、役員Nさん
1. バンカー船について
Q. バンカー船ならではの魅力を教えてください。
Tさん
一番の魅力は、毎日自宅へ帰れることです。勤務後は家庭で過ごす時間を確保でき、自由時間も比較的多くあります。以前はタグボートで勤務していましたが、その働き方に魅力を感じ、現在はバンカー船を選びました。
学生メモ
船員=長期間乗船というイメージが強かったため、「毎日帰宅できる船員」という働き方は非常に
新鮮でした。同じく日帰り可能なタグボートの経験と比較されたお話は、興味深かったです。
Q. バンカー作業は月にどれくらいありますか。
Tさん
平均すると月20回程度です。前日に燃料を積み込み、翌日に給油を行い、その後また次の燃料を積み込むというサイクルになります。ただし、給油先となる本船のスケジュールによって給油回数は変わります。
Q. バンカー作業で最も気を付けていることは何ですか。
Tさん
海象・気象の影響は非常に大きく、揺れる船へ安全に接舷しなければなりません。また、燃料油を海へ流出させることは絶対に避けなければならないため、船員同士が常に意思疎通を取りながら作業しています。
操船前には必ず打合せを行い、どのような手順で接舷するかを全員で確認してから作業を始めます。
学生メモ
「操船技術だけでなく、チームワークが安全を支えている」という話がとても印象に残りました。
個人技ではなく、乗組員全員の連携が何よりも重要な仕事だと感じました。
Q. 船同士を横付けするのは難しいのでしょうか。
Tさん
岸壁へ着けるよりも細かな操船技術が求められます。ただし、経験だけでなく、船員同士の関係づくりや日頃からのコミュニケーションも非常に重要です。
Q. 給油中はどのような仕事をされていますか。
Tさん
600kL積載・600kL/hのポンプを使用しているため、給油自体は約1時間です。
その間は油面監視を行いながら、8つあるタンクのバルブを操作し、船が傾かないようバランスを調整しています。船ごとに燃料の揚げ方にも癖があるため、状況に応じた対応が必要です。
学生メモ
給油中は待機しているだけだと思っていましたが、実際には船体のバランスを見ながら細かく調整
していることを知り、想像以上に繊細な仕事であると感じました。
Q. 一般的な船と違う設備はありますか。
Tさん
基本的な設備は一般的な船とほとんど変わりません。ただし1軸船であるため船ごとの癖があり、それを考慮した操船が必要になります。
Q. 作業で汚れることはありますか。
Tさん
あります。特にC重油は非常に黒く、本船へ接続するホースを外したり、ウェスで拭き取る際に汚れることがあります。ただし、慣れてくると立ち回り次第で汚れを減らすこともできます。
Q. 油を扱う上で特に厳しいルールはありますか。
Tさん
最も重要なのは海上への油流出防止です。また、喫煙規制なども徹底されています。
東海タンカーではC重油のみを扱うため、油種が混ざる「コンタミネーション」の心配がないことも特徴です。
Q. どのような燃料油を扱っていますか。
Tさん
東海タンカーではC重油を専門に取り扱っています。現在のC重油は低硫黄化が進み、以前より扱いやすくなっています。一方、市場にはA重油とC重油の両方を扱うバンカー船もあります。
学生メモ
「C重油」と一言でいっても、時代によって性質が変化していることは知りませんでした。燃料油
そのものも環境規制に合わせて変わっていることが分かりました。
2. 船員の働き方について
Q. 船内での航海士・機関士の当直体制について教えてください。
Tさん
バンカー船では一般的な3直制の当直はありません。朝8時頃に乗船し、夕方16時頃に下船する勤務が基本で、陸上の会社員に近い働き方です。操船についても、2名で分担して担当しています。
Q. 乗船サイクルはどのようになっていますか。沿海船との違いはありますか。
Tさん
バンカー船は日帰り勤務が基本ですが、2〜3か月に一度、名古屋から大阪や横須賀へ燃料を運ぶ沿海航海もあります。1航海は約2日間です。沿海船の乗船期間は人によって異なり、配乗は沿海船所属の船員の中で調整されています。
Q. 2か月の乗船期間中、どのくらい自宅へ帰ることができますか。
Tさん
平水区域での業務が中心のため、基本的には週3日ほど自宅へ帰ることができます。沿海航海の際のみ数日間の乗船となります。
Q. バンカー船の航海士として働くには、海技免許以外に必要な資格はありますか。
Tさん
バンカー船では危険物取扱者などの資格は必要ありません。基本的には海技免許があれば勤務できます。
なお、自動車通勤が多いため普通自動車免許があると便利です。白油を扱う沿海タンカーでは危険物取扱者の資格が必要になります。
学生メモ
危険物を扱う仕事なので危険物取扱者の資格が必要だと思っていましたが、船種や扱う貨物によっ
て異なることを知りました。
3. 東海タンカーについて(昇進・福利厚生・採用)
Q. 一人で仕事を任されるようになるまで、どれくらいかかりますか。
Tさん
目安として半年ほどです。
Q. 船長・機関長になるまでは、どれくらいかかりますか。
Tさん
早い方では約1年で任されるケースもあります。
Q. 未経験者や免許を持っていない方も募集されていますが、人材育成で大切にしていることを教えてください。
Nさん
船長や機関長が現場で直接指導し、実際の作業へ参加しながら体で覚えてもらうことを重視しています。
新卒は1〜2週間、中途採用は1〜2日程度の事務所研修を行い、写真などを使って仕事の流れや船内設備を学んだ後、実際に船へ乗船します。
学生メモ
座学だけでなく、実際に船へ乗りながら覚える教育方針が印象的でした。乗船前に設備の位置を把
握できるよう工夫されている点も安心できると感じました。
Q. どのような学校出身の方が多いですか。
Nさん
宮古、清水、波方の海上技術短期大学校や、三重県立水産高校、三谷水産高校などの出身者が多く活躍しています。必要な海技免状は5級です。
Q. 通勤や交通費について教えてください。
Nさん
基本的には自動車通勤となります。交通費は条件に応じて支給されており、近距離の方は月額1万円程度が支給されています。
4.バンカー船を取り巻く環境について(2026年6月時点)
Q. ホルムズ海峡の封鎖など、中東情勢による影響はありますか?
Nさん
影響はあります。情勢が緊迫した際には、一時的に燃料供給への不安が広がりましたが、当社は製油所から船へ燃料を運ぶ一次輸送を担っているため、供給不足の懸念は早期に解消されました。
一方、外航船向けのバンカリングでは供給制限がかかる場合があります。また、燃料価格の上昇を受け、バンカーサーチャージによる値上げ交渉を行うこともあります。
学生メモ
中東情勢は、日本国内で燃料を運ぶバンカー船の仕事にも影響することが分かりました。船を止め
ないために燃料を安定して届ける、重要な仕事だと感じました。
Q. LNGやアンモニアなどの代替燃料が増えると、バンカー船はどのように変わっていくのでしょうか?
Nさん
LNG燃料を供給するバンカリング船「かぐや」のような船も登場していますが、代替燃料は取り扱いや安全管理が難しく、現場への負担も大きいのが実情です。
調達のしやすさや価格、供給先の多さを考えると、現時点では重油の方が使いやすいと感じます。代替燃料が広く普及するには、港や供給設備などのインフラ整備が必要でしょう。また、環境規制が進むヨーロッパ航路を走る自動車運搬船など、船種や航路によって導入の進み方も異なります。
学生メモ
代替燃料への切り替えには、船以外の環境の変革も必須であることが分かりました。普及にはまだ
時間がかかりそうですが、バンカー船の仕事も今後変化していくと感じました。
•実際に質問してどうだったか・結果
インタビューを通して、バンカー船は、船員でありながら日帰り勤務ができる、特徴的な働き方の船であることを改めて実感しました。
また、日々の仕事内容だけでなく、中東情勢による燃料供給への影響や、LNG・アンモニアなどの代替燃料が普及した際の変化についても伺うことができました。会社説明会だけでは分からない、現場の実情や今後の展望まで知ることができた貴重な機会となりました。
•インタビュー後のイメージ・感想
取材前は、バンカー船に対して「船同士を横付けする操船が難しく、油を扱う危険な仕事」という印象を持っていました。
しかし、実際にお話を伺うと、安全を支えているのは高度な操船技術だけではなく、乗組員同士の日頃からのコミュニケーションや、作業前の綿密な打ち合わせであることが分かりました。個人の技術だけでなく、チーム全体で安全をつくる仕事であることが印象に残りました。
また、「毎日自宅へ帰れる」という働き方は、長期間の乗船が一般的な外航船や内航船とは異なる、バンカー船ならではの大きな魅力です。船員にもさまざまな働き方があることを知り、バンカー船に対するイメージが大きく変わる取材となりました。
•会社概要
今回のインタビューにご協力くださったのは、 東海タンカー株式会社様です!!
会社名:東海タンカー株式会社
所在地:愛知県名古屋市港区名港一丁目9番12号 仲野ビル2階
設立:1947年
運航船種:バンカー船、オイルタンカー
勤務:沿海:2ヶ月乗船→20日休暇/平水:基本日帰り
主な運航エリア:伊勢湾・三河湾・名古屋など中部地区
在籍船員数:47名
ITecMarin企業情報:https://www.itecmarin.com/tokaitankar-recruit



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