ITecMarin

2020年4月12日6 分

【中学生向け】現役船員が語る、商船高専体験記

最終更新: 2022年10月7日

みなさま初めまして。

私は商船高専を卒業し、現在三等機関士として内航船で働いています。

今回は船員になるための船員養成学校である商船高専について、私の実体験に基づいてご紹介したいと思います。

特に商船高専への進学を検討している・悩んでいる方にとって、『商船高専で学ぶってこんな感じなのか』とざっくり理解する一助になれば幸いです。
 

目次

 商船高専とは?

 高専での生活

 高専卒業後の進路

 最後に


1.商船高専とは?
 

「商船高専」は簡単にいうと「船員になることに特化した専門学校」です。

中学校卒業で入学できます。

船員になるための道は複数あります。詳細は省きますが、簡単に違いを説明すると在学期間、取得できる資格が異なります。 

➡詳しくは「船員になるには?第2弾! ~海技士にオレ/ワタシはなる!~」をご覧下さい


 

商船高専は卒業すると3級海技士(航海/機関)の筆記試験が免除となり、口述試験のみとなります。

海技士試験は筆記試験と口述試験があり、このふたつに合格すると海技免状を取得できます。卒業すると自動的に資格が取得できるわけでないので注意してくださいね。

商船高専の在学期間は5年半となっています。


 
1年生のうちは一般科目と専門科目の割合が8:2ほどですが、学年が上がるにつれて専門科目の割合がだんだん大きくなっていきます。

3年生になると航海コースと機関コースに分かれ、さらに専門的な内容となります。学校パンフレットに詳細が記載されていますので、志望校のHPを確認されるといいと思います。

例として富山高等専門学校の学習内容のリンク先を載せておきます。
 
https://www.nc-toyama.ac.jp/departments/faculty/cs/

5.5年あるうちの1年間は練習船実習を行います。

実施タイミングは学校ごと、年度ごとに異なるります。
 

余談ですが、昔は練習船実習で世界一周をしていたそうです。現在はハワイやシンガポールに行けますが、これも年度によって行先が変わったりすることもあるそうです。


2.高専での生活
 

高専は実家からの通学、遠方からの学生は寮に入り寮から通学する2つの通学方法があります。

商船高専は全国に5校しかないので「商船高専にいきたいけど家から遠くて...」という人でも大丈夫です。あるあるですが、寮生のほうが授業に遅刻する割合が高かったです(笑

高専生活は一般高校と同じように部活動もありますし、文化祭もあります。


 

違う点を列挙してみると
 
・商船学科専用の制服がある
 
海上自衛隊の方が白い制服を着ているのを見たことある人はいると思います。あれに似た制服が着れます。とてもかっこいいです!

・校内練習船実習がある
 
1日の実習や船で一泊する実習もあります。船酔いに少し強くなります。

・海技実習がある
 
船乗りになるためのスキルを実習をします。例えば溶接、ガス切断実習、旋盤実習、カッターを漕ぐ実習などなど...。1年生のうちから現場でも役に立つ機械工作の基礎が学べます。

 個人的に溶接がとても楽しくいま働いている船でも機械工作をしています。3年生になると実験実習という科目に変わります。こちらは実験レポートの提出が加わります。高専生活で大変なことのひとつですね。

・卒業研究がある
 
 5年生になると卒業研究が追加されます。自分が興味ある分野の実験室に配属され、1年かけて研究します。大学みたいですね。私は内燃機関実験室に所属しました。

個人的意見ですが、商船系学校のいい点・悪い点を主観でご紹介します。

・いい点
 
 ・船乗りになるための専門教育が受けられる。
 
 ・座学の知識を実習でさらに理解できる。
 
 ・校則が緩い(例えば、明るすぎるのはダメですが髪を染めるのも可能ですし、申請すれば自動車通学も可能です。)

・悪い点
 
 ・赤点の基準が高い(60点) ※普通に勉強してれば大丈夫です!
 
 ・出会いがない。 ※男子9:女子1
 

 
正直、船乗りを目指すなら最高の環境だと個人的には思います。

船員になって、当時を振り返ってみると、学生当時に学んだことは基礎中の基礎でした。しかし、就職してみればその基礎がとても大事だなぁと実感できました。ちゃんと勉強しててよかったと心底思いました。

興味のない分野でもしっかり勉強することが大切だと思います。


3.高専卒業後の進路
 

高専卒業後は船乗りになる(海上就職)、メーカーなど陸上の仕事に就く(陸上就職)、専攻科や大学に編入する(進学)の3つがあります。

私の学校・年代では、海上職就職:陸上就職:進学の比率が大体、7:2:1でした。

船乗りには国内航路と外国航路の2つがあり、外国航路の船に乗る場合は英語等の勉強を在学中にしっかりしてくださいね。

私は、海上職(内航船機関士)に就職し、卒業後すぐに現場に出ました。当時は、「戦力になれるかな」や「人間関係うまくできるかな」等々不安になりました。

正直言うと、戦力にはなれないです。「10年船乗りして一人前」って言われる世界ですからね。ただ、そこで落ち込まず上司にわからないことを聞いて仕事を覚えるようにしてください。その頑張りを上司はきちんと見てます。

人間関係はしっかり挨拶ができればみんな優しく接してくれます。しっかり挨拶をしましょうね。挨拶ができていなくて船長に怒られている人を何人か見たことがあります。


最後に
 

中学卒業で船乗りという道を決定するのはかなり勇気がいる選択だと思います。

しかし、陸上就職の道もあり「あぁ、船乗り向いてないなぁ」と途中で感じても、陸上就職したり進学する方法もあります。悩む人は高校卒業後でも船乗りになれる学校があるので「商船高専に入学しないと船乗りになれない」ということはありません。

それでも進路に悩む場合はこのご時世SNSが普及していますのでTwitter等で質問すると優しい先輩がいろいろ教えてくれますよ。

しっかり悩んで選択してくださいね。皆さんと海の上で会えるのを楽しみにしています。


著者について
 
氏名:井川 修平(仮名)
 
職業:内航船員
 
保有資格:三級海技士(機関)、第一級海上特殊無線技士、第一級小型船舶操縦士
 
経歴・船種: 商船高専➡三等機関士
 
船員を目指したきっかけ:機械が好きで珍しい仕事に就きたかったので機関士を目指しました。
 
インタビュー・加筆修正:ITecMarin株式会社
 
写真: https://www.photo-ac.com/ , https://burst.shopify.com/

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