船乗り(船員)になるには!?資格取得などについて徹底解説!!
- ITecMarin
- 2020年3月20日
- 読了時間: 11分
更新日:6月19日
将来船員になりたい学生、転職を考えているサラリーマンの方向けに、分かりやすく船員の役職となり方をお伝えします。海運の業界に少しでも興味を持っていただける方が増えると嬉しいです。
1.船員とは?
船員とは、一言でいうと「船に乗って仕事をする人」のことです。船は海上で物資を輸送する一つの集団であり、海に浮かぶ一軒家でもあります。そのため、船員の職種や仕事内容は多岐にわたり、それぞれに専門的なスキルが求められます。この記事では、代表的な船員の職種と乗務する船の種類について詳しく解説します。
船員職種について

船員の職種は、大きく「航海」「機関」「その他」の3つに分かれます。
具体的には下記になります。
<航海>
・船長
船の最高責任者。船内の取り纏め、進路決定や船員管理を行う(例:ルフィ)
・航海士
船の操縦や指揮、貨物の管理などを行う役職(例:ナミ)。
最も取得が困難な一級海技士は医師免許を持つ人よりも少ないです。
・甲板員
航海士の指揮の基、見張りや舵とり、航海機器の保守整備などを行います。
<機関>
・機関長
船を動かすエンジンをはじめ、さまざまな機械、装置の運転管理などを行う「機関
部」の責任者です機関部の最高責任者(例:フランキー)
・機関士
エンジンやボイラーなどの船舶機器を管理する役職
・機関員
機関士の指揮の基、機関設備の運転、保守整備などを行う
<その他>
・船医:船の上で医療を行う医師(例:チョッパー)
・看護師:船上の看護師
・司厨士:船上の料理人(例:サンジ)
・パーサー:船上の事務員(フェリーの販売員など)
…etc.
船の種類について
乗務する船の種類によっても仕事内容が異なります。
具体的には下記のような船の種類が存在します。
1. 貨物船
貨物船は貨物を運ぶ船で、コンテナ船やばら積み船などがあります。
コンテナ船は定期航路で貨物を運ぶことが多く、ばら積み船は石炭・鉱石・穀物・鋼材など形が定まっていない固形物を輸送することが多い傾向にあります。
2. タンカー・ガス船
タンカー船は原油や液体化学製品を、ガス船は液化天然ガスやアンモニアなどの気体を温度や圧力で液化して運ぶ船です。
危険貨物を運ぶことも多く、高い専門性や危険物取扱者資格などが求められますが、その分お給料が高い傾向にあります。
3. RORO船
RORO船とは、貨物を積んだトラックやトレーラーが自走して船に乗り降りし、
貨物の積み上げを行い、貨物を載せた車輌を海上輸送する船になります。
甲板の下に2〜5層に分かれた車両デッキが存在しています。
船体には船と陸を繋ぐ可動式のスロープがついており自動車やフォークリフトが直接乗り降りできるため、荷役が効率的で荷役設備整っていない港にも輸送可能な船となっています。
船のスピードも早いため、牛乳や野菜など、食べ物などの期限のある貨物輸送に適しています。
トレーラーやスペースが必要となるためコンテナ船などに比べ積載量は少ないですが、車での陸上輸送より、貨物あたりの温室効果ガス排出量が少ないなどの観点からモーダルシフトに適した船として注目されています。
トレーラーの積み下ろしは専門の会社が行うので荷役当直に必要な人数は少なく、船員の荷役負荷が低い反面荷役効率化により港に留まる時間が短いため、忙しい傾向にあります。
4. 客船
客船とは、乗客を輸送することを主な目的とした船で、観光や移動、娯楽など多様な用途に利用される船となります。一般的に大型で、何百人から数千人の乗客を収容できる客室、レストラン、プール、劇場、カジノなどの施設を備えており、「海に浮かぶホテル」とも言われるほどの快適性と娯楽性を持ち合わせています。
船内は複数のデッキに分かれており、乗客用スペースと乗員用スペースが明確に区分されています。車両の積載を前提としたRORO船とは異なり、人の快適な移動と滞在を最優先に設計されています。
5. タグボート
港で大型船の離着岸を支援したり、はしけを引っ張って貨物を輸送するハーバータグと
外洋で洋上風力設備や大型プラントの建設、海上輸送などを行うオーシャンタグがあります。
機動性の高さから海での故障や座礁した船の救助や人命救助にも使用されます。
ハーバータグとオーシャンタグでは船員の働き方も異なっており、ハーバータグは日帰りベースでの勤務となるため、
自宅から通勤することが可能です。
オーシャンタグは外洋が職場なので2〜3か月遠出することがあります。
大型海上構造物の建造プロジェクトなどでも活躍しており、
長期間乗船する分、ハーバータグと比較すると給料も良い場合が多いです。
6. 調査船
調査船とは、魚などの水産資源や地質、南極や深海といった未知の領域を調査する船です。
場所や研究対象に応じて、氷の海を進むための設備や、深海を調査する探索機を搭載して搭載しています。
目的に合わせて水質などの環境や生き物を調査する海洋調査船、海底まで長いドリルを降ろし海底を掘り進めて資源調査を行う堀削船、ロボットアームやライトを搭載した自力航行型の深海潜水船などが存在しています。
研究者や調査機器の点検整備を行う作業員など様々な船員が乗船します。
特殊で巨大な機材の取り扱いや頻繁に霧が出たり氷の張った海域を進む事もあるので、
安全には細心の注意を払っておく必要があります。
調査という目的上、行政が運営する船も多く、調査船で働ける職場は限られていますが、調査自体の面白さや達成感、思わず絶景に巡り合った時の感動は大きいです。
一般商船と比べると、給料は若干低い傾向にありますが、その分年間航海スケジュールが決まっているなど、スケジュールを組やすい傾向にあります。
7. ガット船
ガット船とは、砂利や石材などの重量物を運搬するために設計された船舶です。
ガットクレーンと呼ばれる専用の荷役装置を備えており、積荷の積み込みや荷下ろしを効率的に行うことができます。防波堤の建設や洋上空港の基礎工事などにも活用されており、運搬した石材を海底に投下することで、構造物の基礎を築く役割を果たしています。
2.船員になるには?(航海士・機関士・通信士編)
船員になる方法はいくつかありますが、本記事では2パターンを紹介させていただきます。
①海技免状を持って船員になる方法
②免状を持たずに船員になる方法
①海技免状を持って船員になる方法
海技免状とは?
海技免状とは、「船員として働く上での知識や技量を証明する免状(国家資格)」のこ
とです。免状を持つことにより海で働く「海技士」としての有資格者となります。この免状を持っているかいないかは、船員になってからの役職や昇進に大きく影響します。
日本は「航海士」「機関士」の免状を取得する学校や制度が整っています。(現在で
は、船舶のシステムの発達に伴い、通信士は航海士が兼任する場合が多く、航海士が通信
士の免状も所持している場合が多いです)。
免状にも級分けがあり、六級~一級までのランクがあり、取得している級によって、船
員として乗船勤務できる船の大きさや航海できるエリア・役職が変わります。自身がどのような船のどのような船員になりたいか、また、今までの経歴によって受験できる学校、取得することができ
る免状も変わってきます。一度いずれかの免状を取得し、船員として経験を積みながら、さらに上級の免状取得を目指す方も多くいますので、キャリアの途中変更も不可能ではありません。
海技免状を取得するまでの流れ

A) 免状を持っていない状態から3級海技士を取得する方法
A-1)商船系大学へ進学する道
一般高校卒
↓
商船系3大学(東京海洋大学・神戸大学・東海大学)へ入学し、3級海技士免状を取得でき
る学科へ進学(航海or機関)
↓
大学学部及び、免状取得に必要な乗船実習科(卒業後6か月間、練習船or内定先にて乗
船)を卒業すると、3級海技士の筆記試験免除の資格を取得できます。実習終了後、3級海
技士の口述試験を受験し、合格すれば晴れて3級海技士の免状を取得し、航海士or機関士
として勤務することができます。
・神戸大学 海事科学部 :http://www.maritime.kobe-u.ac.jp/
・東京海洋大学 海洋工学部 :http://www.e.kaiyodai.ac.jp/
・東海大学 海洋学部 :http://sdb01.scc.u-tokai.ac.jp/index.php
A-2)商船系高等専門学校へ進学する道
一般中学校卒
↓
商船系高等専門学校(富山・弓削・広島・大島・鳥羽)へ進学し、3級海技士免状(航海
or機関)を取得できる学科へ進学。高専卒業及び、免状取得に必要な乗船実習(専攻コー
ス選択前3ヶ月間、コース選択後9か月間、練習船or内定先にて)を修了すると、3級海技士
の筆記試験免除資格を取得できる。
↓
高専卒業後、3級海技士の口述試験を受験し、合格すれば晴れて3級海技士の免状を取得
し、航海士or機関士として勤務することができます。
・富山高等専門学校 :https://www.nc-toyama.ac.jp/
・広島商船高等専門学校 :http://www.hiroshima-cmt.ac.jp/
・鳥羽商船高等専門学校 :https://www.toba-cmt.ac.jp/
・大島商船高等専門学校 :http://www.oshima-k.ac.jp/
・弓削商船高等専門学校 :http://www.yuge.ac.jp/
A-3)一般大学を卒業後、海運会社へ就職し、海技大学校「海上技術コース」へ進学する道
商船系の大学や高等専門学校を卒業していなくても、海運会社によっては先に採用をして
もらい、会社からの費用負担により三級海技士免状を取得する事ができます。免状取得
後、実際に船員としての勤務が始まります。
B)4級海技士免状をお持ちの方が3級海技士を取得する
・海技大学校へ進学する
海技大学校にて海技士コース(三級航海・三級機関)へ進学する事により三級海技士免
状を取得できます。主に4級海技士を取得可能な学校を卒業後、ステップアップのため
に進学する場合が多いです。
C)免状を持っていない状態から4級海技士を取得する
C-1)高校卒業以上の学歴をお持ちの方
海上技術短期大学校へ進学し、2年間の所定の教育課程を修了する事で4級海技士(航海・
機関の両方)の筆記試験免除の資格を得る事ができます。学校卒業前に全員で口述試験を
受験し、合格すれば、晴れて4級海技士の免状を取得することができます。
海上技術短期大学校は全国に3校あります。(2020年3月現在)
・国立宮古海上技術短期大学校:https://www.jmets.ac.jp/miyako/index.html
・国立清水海上技術短期大学校:https://www.jmets.ac.jp/shimizu/index.html
・国立波方海上技術短期大学校:https://www.jmets.ac.jp/namikata/index.html
C-2)中学生から、4級海技士免状の取得を目指す
中学卒業後、海上技術学校へ進学し、3年間就学、修了すると4級海技士(航海・機関の両
方)の筆記試験免除の資格を得る事ができます。学校卒業前に全員で口述試験を受験し、
合格すれば、晴れて4級海技士の免状を取得することができます。もちろん、海上技術学
校を卒業する事で「高等学校卒業」同等資格を得ることができます。
海上技術学校は全国に4校あります。(2020年3月現在)
・国立小樽海上技術学校: https://www.jmets.ac.jp/otaru/index.html
・国立館山海上技術学校: https://www.jmets.ac.jp/tateyama/index.html
・国立唐津海上技術学校: https://www.jmets.ac.jp/karatsu/index.html
・国立口之津海上技術学校: https://www.jmets.ac.jp/kuchinotsu/index.html
免状を持たずに船員になる方法
免状がなくても船員になれます。船上で経験を積みながら資格を取得する方法もあるので、自分に合った方法で船員を目指しましょう。
①甲板員・機関員
各船の勤務状況や会社の制度にもよりますが、免状が無くても甲板員・機関員として働く事ができます。一定期間乗船をすると、船員として履歴を積んだ記録(乗船履歴)が付き、海技免状取得のための試験を受験できるようになります。
②司厨員
長い航路を旅する船には、必ずコックさんが乗っています。基本的には調理師免許を取得している方であれば船員として働く事ができます。
海を航行し、すぐに陸に行く事ができない船という環境では、食事は非常に大切です。船で働く人は皆、1日3回の食事が楽しみであり、生き甲斐となっています。
限られた食料、船内での限られた設備で如何に美味しく栄養バランスの取れた食事を提供できるかが、船の司厨員の腕の見せ所です。素晴らしい食事が食べられる船では必然、船員のやる気も上がり、仕事も捗ります。
③パーサー(事務員)
パーサーは船の事務を司る重要な役職です。貨物船には乗船している場合は少ないですが、客船等多くの人が乗船している船には乗船している場合がほとんどです。
ホテルで言えば、フロントマンによるチェックイン・チェックアウトの手続きやフロントでのお客様対応と似たような業務を中心に行います。
特に外航クルーズ船では、お客さんだけでなく乗組員も含めて非常にたくさんの人が行く先々の港で上陸します。つまりは、その度に入国・出国手続きが必要となります。船が港を入出港するために必要不可欠な書類作成、申請等も行う事務の要の役割です。
まとめ
以上船員のなり方をご紹介させていただきました。
・進路考察ポイント①
どのような仕事をする船員に惹かれるか
・進路考察ポイント②
海技免状を「持って船員になる方法」と「持たずに船員になる方法」のどちらを選ぶか
・進路考察ポイント③
今までの経歴を踏まえ、どのようなステップを踏むのがよいか
船員は四方を海に囲まれている日本という国では必要不可欠な職であり、さらには比較的免状取得までの費用もかからず高収入を得る事ができるとても魅力的な職業だと思います。是非、海で働く意欲がある、少しでも興味がある方は目指してみてはいかがでしょうか?
ご不明な点やより詳しく知りたいことありましたら、下記よりお問合せ下さい。
また、ITecMarinではほかにも下記記事を公開しています。
ぜひ、こちらご確認ください。
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